いとをかしな日々 7

スーイスイと泳ぐようにでも

もがくようにでも

どちらにしろ こうも湿りけがあると

いよいよ手足に水かきができそうだ

 

泣きそうで泣けない空

はたまた

霧のような雨が降っていたかと思えば

心おだやかではいられないほどのどしゃぶりになったりする

梅雨あけはいつになるのだろう

 

暑いパリの夜

バケツをひっくりかえしたような雨

キンキンに冷えたベトナム料理屋にいた

 

パリは目的地ではなく経由地だった

アパルトマンの一室を旅人にシェアしてくれるゲストハウスにお世話になった

6人部屋はほぼうまっていた

人生で2回目の二段ベッド

みんなが日本人のルームシェアははじめてだった

ゲストハウスにはホテルだと思えば厳しい

暮らしだと思えば至極真っ当なルールがいくつかあった

そのおかげで旅中でいちばんの清潔さと快適さがそこにはあった

ルールを満たせない場合は容赦なく罰金が生じることもあり

出会ったばかりなのにもかかわらず

自然と仲間意識が生まれ

当たり障りのない自己紹介から

街でみつけたおいしいもの

一歩踏み込んだ身の上ばなし

海外での仕事のはなしや恋のはなしに花が咲いた

買い物三昧 仕事 愛しい人に会いになどそれぞれの想いでパリに来ていた

 

迷子になりながらやっとたどりついた蚤の市から部屋に戻るとメンバーがかわっていた

はじめましてとさよならを繰り返し 最後は貸し切り状態

広いアパルトマンでひとりぐらしを満喫することとなった

 

ある夜予定が合った同じ部屋のひとりと出かけた

2人ならとフランス料理を食べにいく予定が

どこでどうなったのか忘れてしまったが

ベトナム料理屋でフォーをすすっていた

ベトナム語もフランス語もままならない2人だったけれど

通じるはずのない日本語で支障なくすべてがすすんでしまうことが

なぜだかおかしく笑いがとまらなかった

スープが沁みわたり おいしいねと小さなテーブルをはさみ

気を張った旅で ほっとほどけたひとときだった

気づかないふりをしていた急に降りだしたどしゃぶりの雨に

困り果て顔見合わせ笑うしかなかった

なんだか気持ちがせわしない気持ちのいい夜だった

 

パリでのほんの束の間ひとりぐらし最後の晩餐は

もう一軒の評判のフォーのお店でと決め込んだ

傘のいらない帰り道 足取りは軽やかだった

次の朝早く 目的地へと向かうため部屋をあとにした

朝ぼらけの中 セーヌ川が静かに流れていた

 

いとをかしな日々