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梅しごと

庭の梅の実りはもう少し先なので

すこし遠くから梅の実を届けてもらう

まずは青梅を

べっぴんさんをいくつか甘露煮にしようと

やさしくやさしくゆでこぼし

お砂糖加えて 

あともう少しのところで火加減をまちがえたのか

あれよあれよと皮がむけていき

まるでマリモのような梅煮に仕上がった

副産物で梅ピールのさわやかなジャムができた

 

梅しごとはこの季節のお楽しみ

梅酒 梅シロップ 梅ジャム 梅エキス 梅干し

毎年この季節のお楽しみ

 

そういえば楽しみの梅しごとをしない年があった

ちょうど今ごろサルデーニャ島にいた

イタリアの2番目に大きな島 サルデーニャ

 

アグリツーリズモを営んでいる

仕事熱心で恥ずかしがり屋でおちゃめな人が出迎えてくれた

ある日夕食は外でと車で出発した

夕焼けの広大な地をどこまでも進んでいった

おなかも空いてきたし いったいどこへ向かっているのだろう

すこし不安になってきたころ

住宅街が見えてきて あるお宅に案内された

そこには大きな焼き窯があった

20人ほどが窯のまわりで談笑していた

しばらくして歓声とともに焼きあがった料理がテーブルに運ばれてきた

拍手とともに豚の姿焼があらわれた

今日は豚のお祭り

外はもう暮れていた

広場にはステージがありテーブルやイスが準備されていた

郷土菓子の屋台も並んでいた

豚をあますことなく頂く いくつかの豚料理が振舞われた

ワインとともにありがたく豚を頂いていると

ステージでライブがはじまった

コンドルは飛んでいくのような民謡

民族楽器の音とともに気持ちのよいのびやかな歌声

すると数人がステージのそばで腕を組み 民謡のリズムに合わせてステップを踏み始めた

陽気なひとたちだなとワイン片手に眺めていると

どこから集まってきたのか踊る人が増えみるみる大きな輪になった

お祭り魂に火がついてムズムズしていると

豚祭りの主催の紳士が踊り方を教えてくれた

この地域ではこどものころに学校で習うからみんな踊れるそうだ

 

恥ずかしがり屋の彼は

もちろん踊れるよ でもオレはいいよと輪に加わろうとしなかった

 

さあ一緒に踊ろう

年配のご夫婦がようこそと間に入れてくれた

ステップがなかなか覚えられずおぼつかない足取りなのは酔いが回ったせいにしておこう

腕を組み合い音に合わせてこまやかなステップを踏みながら

右に左に前に後ろに 中央に集まっては 輪は大きく広がって

楽しくて楽しくて ことばがなくても笑いあえた ずっと踊っていられた

音楽が止み各々が家路につくとき

踊ったみんなとハグをしさよならした

隣のご婦人が両手で頬を包んでくれた またいらっしゃいと

 

アグリツーリズモを発つ朝

大きなリュックから和柄の折り紙を取り出し

折り鶴を拵えると

恥ずかしがり屋さんはたいそう喜んでくれた

もう一回もう一回と

しっぽを振る子犬のような目でなんども折り紙をせがんだ

 

サルデーニャ島を離れて数日たったある日

今晩お祭りがあるんだけど踊りに行かないかい?

踊らない人から踊りのお誘いメッセージがきた

おちゃめがすぎる

 

 

追熟している梅の香りに包まれながら

ふとそんなことを思い出した

 

いとをかしな日々